大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(て)9号 決定

被告人 川上謙一

〔抄 録〕

本件上訴権回復請求の要旨は、被告人は東京高等裁判所が昭和三十四年四月六日冒頭掲記の被告事件につき言い渡した判決について、同年四月九日その上訴を放棄したのであるが、これは皇太子御成婚による恩赦に浴し得ると考えたがためであつて、右上訴の放棄にあたつては家族および弁護人とも相談せず独断でその手続をとつたものであるところ、被告人の期待に反して結局恩赦に浴し得ないこととなり、右上訴の放棄は早まつた失敗に帰し、家族および弁護人から上告するようにすすめられ、また被告人としても上告をして審理を仰ぎたいので、右の事情を汲みとり上訴権の回復を許されたく、右回復の請求と同時に上告の申立に及んだと言うのであつて、前記被告事件記録によれば被告人が昭和三十四年四月九日東京高等裁判所が言い渡した前記判決について上訴の放棄の申立のあつたことが認められる。しかしながら、所論のような事由は刑事訴訟法第三百六十二条に規定する上訴権回復請求の事由に該当しないこと明白であるのみならず、所論の如き錯誤があつても被告人のなした前記上訴権放棄の訴訟行為は無効となるものではないから、被告人の本件上訴権の回復はこれを許すに由なく、従つてまた被告人の本件上告は上訴権消滅後になされたものであること明らかである。

(滝沢 久永 八田)

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